山中池の黄金魚

mito

2013年06月27日 23:07

さて、今宵のお話は怪しい噂も時に真実であることよといった類の噺

あれはたしか2007年の頃だったと記憶していますが、その昔三宮センター街にあったRekiというフライショップの店長・中前さんと仕事帰りに店でグダグダとしゃべっていた所、今でもお付き合いのある釣り友達の堤さんが来店しこんな話をした。


「自分の実家のある○×市の奥深い山中の野池に黄金色に輝く魚がいる。」


金色の錦鯉か?  まさか密放流のドラド!?(笑)


○×市は神戸から高速で1時間もかからない近郊都市だ。
田舎とはいえそんな半都会に金色の謎の魚がいるなんて!なんともわくわくするアヤシイ話だ。
そして堤さんはその池で釣ったという鼻曲りの雄アマゴ(推定35cm)の写真を見せてくれたのだった。

「この魚を釣った時、池の奥の方を悠然と泳ぐ金色の魚を見た。絶対見た!!」

堤さんがその地図にも載っていない池をどうやって見つけ、そこに魚がいるのを知ったのかは定かでないが、その山中池を実際に釣行する事になったのはそんな話もすっかり忘れかけた1年ほど経った初冬の事だった。



事前に堤さんからは聞いていたが、山中池へのアクセスは困難を極めるものだった。
車止めから藪だらけの杣道を急登攀で50分。
池の畔にたどり着いた時にはぜえぜえと息があがっていた。


山中池はよくある灌漑用ため池といった風情の想像よりも随分小さな池で外周はぐるり70mといったところ。
奥側に小さな流れ込みがあってそのインレットまわりに少しだけむき出しの陸部がある他はボサが被り急深になっていた。


あやしい魚影はなし。  さっそく分かれて釣り始めるが反応はない。
開始30分でルースニングに切り替えひたすらアタリを待つ。


待つこと数十分。 インジケーターが緑の水面にスウゥーッツと引き込まれた!!


  バシュッ  あわせと共にロッドが大きく弧を描く!!





「堤さん、来たよ!! 掛かった!!」






落ち着いてヤリトリしネットに入ったのは40cm程の丸々太った鰭ピンのブラウントラウト。体側の黒や赤もハッキリと出た美麗な魚だった。



「こんな所になんで・・・」初めて釣ったブラウンの美しさに感動しつつも複雑な気持ちに。
とはいえ、かくして謎の黄金の魚の正体は無事暴かれたのであった。



その後堤さんといろいろ調べた所、どうやら10年以上前に高圧線を掛ける工員が山から下りず食糧確保の為に鱒類を放した末裔が残っていたらしい事がわかった。
インレット付近には確かに稚魚らしき小魚も確認できた。

ふと思い出して懐かしむ事がある。今でもあの山中池でブラウンの末裔は生き続けているんだろうかと・・・。


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